【書籍紹介】小説

「蜜蜂と遠雷」の紹介

蜂蜜と遠雷

引用:幻冬舎(http://www.gentosha.co.jp/book/b10300.html)

「蜜蜂と遠雷」直木賞受賞らしい魅力ある物語

調律師だとか審査員だとか、コンテスタントや国際ピアノコンクールなどが登場する物語なので、音楽に精通していないと面白くないのかなと思う人がいるなら、そう思わずに読んでほしいと伝えたい小説です。
ジュリアード音楽院学生のマサル、天才と呼ばれたが母の死からピアノと遠ざかった栄伝(えいでん)亜夜、楽器店に勤める高島明石、音楽教育など受けていないしピアノも持っていない養蜂の仕事をしている風間塵、こうした顔ぶれで物語が進んでいきます。

音楽系の物語なのにいきなり養蜂の仕事をしている登場人物が出てくるなど、なんだ?と思うのですが、読み進めていくうちに読むことを停止出来ない自分に気が付きます。
コンクールの審査から発表前の息を止めてしまいそうな緊張感、喜びと落胆、このコンクールでは、音楽家ホフマンから推薦された実力の持ち主「塵」がキーマンとなって物語が進みます。

ピアノの音が聞こえてくるような臨場感ある作品

音楽にあまり興味がない、特にコンクールの世界等全く関係がないという人にとって、こうした作品はかったるく、言葉の意味が分からないと思う所もあり、夢中になれないことが多いです。

しかしこの作品は、著者の圧倒的な表現力によって、音楽を知らない人にもしっかりと、ピアノの音、コンクールに出場する人の緊張感、その気持ちなどがひしひしと伝わってきて、気が付くと物語の中にぐっと入りこんでいます。
実力あるピアニストたちがコンテストで優勝することを目標に、ぶつかり合う物語、シンプルな構成であるのに、この心の持っていかれ方は何だろう?と思うくらいに、著者の巧みな表現力に圧倒されます。

魅力はいきいきと描かれた登場人物たち

ピアニストたちが登場するのですが、このピアニストたちに共通しているのはピアノを愛しているということと、ありがちな悪者がいない、本当にいい人たちだという点です。
いい人たち、一生懸命になっている人たちだから読んでいて気持ちがよく読み進める事が出来る、そういった感覚があります。

審査員にしても、調律師にしても出てくる登場人物のキャラクターが非常にしっかりと個性を発揮しており、誰が誰、どういう仕事で、どういう使命をもってコンクールに関わっているのかそれが明確です。
誰もがこのコンクールにひたむきで、みんなが素晴らしい、だからこそ気持ちよく嫌な気持ちを持つことなくさわやかに読み進めていけるのです。

通常物語には悪役やひねくれもの、ライバル意識をむき出しにしてくる等の嫌われ者が出てくるのですが、それがいないのに物語が心地よく、また新鮮なイメージで進みます。
最終的にこのコンクールで勝ち抜くのはこの4人のうちのだれなんだろう?読んでいくうちに自分が好きな登場人物が明確になってきて、読み手によってこの人を応援したいという登場人物がそれぞれ違うのではないか?と感じます。
最後まで気持ちよく爽快に読める作品というのは、最近特に少なくなっていると感じますが、この作品は本当に心地よくあっという間に読んでしまうくらい魅力ある作品となっています。